【令和の資産運用】日本人は円を売れ!(その2) | あじゅWeb

【令和の資産運用】日本人は円を売れ!(その2)

投資

※この記事は筆者の個人的な見解を述べたものであり、実際の投資のリターンを約束するものではありません。あくまで投資はご自身の判断に基づいて自己責任で行ってください。

前回は、将来人口推計というこの世の中で最も信頼できる未来予測を拠り所として、今後の日本ではデフレ(かそれに近い状態)が長期間続く可能性が高いところまでを導き出した。

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デフレなら現金を持つべきは本当か?

経済を勉強したことがある人であれば、デフレを予測するそれ即ち現金を保有することが有効な資産運用策という結論を導き出すのではないかと思う。

教科書的な理論で言えばその通りだ。物の値段が下がるということは現金の価値が上がるということだ。今手元に100円玉があるとしよう。ジュースの値段は100円だ。100円玉一つでジュースが一つ買える。一年後ジュースの値段が50円に下がったら、100円玉一つでジュースが二つ買えるようになる。実質的に100円玉の価値が上がったのだ。

平成の失われた20年はデフレとの戦いであったといわれる。デフレで現金の価値が上がる(少なくとも下がらない)時代だったのだ。だから人々は銀行預金をして現金を蓄えてきた。それによって利息は全く付かなくても、それが賢いお金の保存方法だったのだ。

これから先の時代、デフレが起こることが強く示唆されている。であれば、今まで通り銀行預金として現金をもちつづければいいのではないか。もっともな意見に聞こえる。だが、グローバル化の現代で日本国内でおこることだけに目を向けていてはいけない。デフレの日本と、そうでない日本以外の世界を同時に考えることで、銀行預金ではいけないことが見えてくる。

デフレの国 vs インフレの国

日本以外の世界の例としてアメリカを考えよう。アメリカはインフレの国だ。アメリカの中央銀行であるFRB(日本の日銀みたいなもの)は、インフレターゲットと言って物価上昇率を2%程度にすることを目標としてきている。そして、実際のアメリカの物価上昇率(インフレ率)も2%前後で推移してきている。

では、デフレの国(日本)とインフレの国(アメリカ)が存在した場合、何が起こるのだろうか。デフレの国の通貨が高くなる(円高になる)というのが経済学的結論である。教科書的な説明はこうだ。

日本では100円でジュースを1本買うことができるとしよう。アメリカではジュース1本は1ドルだ。為替レートが「1ドル=100円」であれば、ジュース1本の実質的な価値は日本でもアメリカでも同じになる。このような世界で、デフレ・インフレが起きるとどうなるか見てみる。

まず、日本ではジュース1本の値段が50円になる。”もの”の値段が下がるデフレだ。一方のアメリカでは、ジュースの値段が2ドルになる。”もの”の値段が上がるインフレだ。それぞれの国が独立して個別の経済活動を行っているのであれば、これ以上の内容を導き出すことは難しい。が、世界中で貿易が行われていて”もの”の本質的な価値が変わらないことを仮定すると、日米でジュースの値段が同じでなくてはならなくなる。日米でジュースの値段が同じであるためにはどうならなければいけないのか。為替レートが適切な水準に調整されなくてはならない。

上記の例では、デフレ・インフレ後はジュース1本が、50円と2ドルである。この価値が同じになるためには、「2ドル=50円」でなければならない。わかりすく書きなおすと、「1ドル=25円」になっていなければ、ジュース1本の値段が同じにならないのだ。デフレの日本とインフレのアメリカが存在した場合「1ドル=100円」から「1ドル=25円」の円高になる必要がある。これが購買力平価と言われる理論から導き出される結論だ。

円高になるなら円を持つべきだが…

もし、上記で導き出される結論が正しいのであれば、日本人は円を売ってはいけない。なぜなら今後デフレによって円が高くなる可能性が高いのであるから、高くなる(資産価値が増える)円を売るのは愚の骨頂である。が、私の結論はそうではない。

私は、長期的に見た場合の円相場の方向性は円高方向ではなく横ばいか円安方向であると考えている。一時的な円高の可能性は否定できないが、長期的に円高傾向が続くことはないと考えている。いや、長期的な円高傾向を引き起こすことはできないという方が正しいかもしれない。

ご存知の通り、日本では日銀が必死になって金融緩和を続けデフレを脱却しようと努力している。その方針自体に異論はない。金融緩和をしなければもっと大変な事態になっていたかもしれないが、何とかカンフル剤を打ち続けることによって現状を維持できている。

金融緩和によって市場には日本円があふれている。市場に供給される円が増えると当然お金の価値が下がる(インフレになる)のがセオリーだが、人口減少という強力なデフレ圧力の下で、現在は相殺されているようだが、人口減少は加速するのに対し金融緩和をこれからさらに加速させることは現実的ではないといわれている。

だとするとどうなるか。徐々に、インフレ圧力とデフレ圧力のバランスがデフレ優位に傾いていくことになるだろう。やはりデフレだ。

デフレは円高を引き起こすか?

理論的にはデフレによって通貨高(円高)が引き起こされるはずである。が、少なくとも日本政府はその状況を座して放置することはないだろう。リーマンショック後の民主党政権下で円高が放置されたことにより何が起きたかをはっきりと覚えているからだ。徐々に輸出一本足ではなくなりつつあるものの、円高により景気が悪くなるという経験則がある以上、日本政府は円高を放置せず、何とかその動きを食い止めるように手を打つだろう。

だが、日本政府がいくら手を打ったところで、世界中の投資家が我先にと円を買えば、円高を止めることはできない。中国などと違い管理相場ではないため、日本政府による円相場のコントロール力は限定的だ。

投資家の円買いは円高を引き起こすのか?

投資家が円を買うとすると理由は一つである。投資家が行動する理由はその行動が儲かるからと考えているからである。つまり、投資家が円を買うということは円を買った方が儲かると考えているからだ。

円への投資で儲かるには二つの方法がある。高い利息をもらえるか、円自体の価値が高くなるかの二つだ。利息については日本政府(正確には日銀)がコントロールできる。政策金利を(もっとマイナスに)下げればよいのだ。利息目当てで投資家が円を買ったとしても、その動きは政府(日銀)によって幾分コントロールすることが可能であるように思える。

円自体の価値が高くなる方はどうか。一時的には十分にありうる動きで、否定はできない。だが、考えてほしい。日本国外の投資家が円を買ってその後どうするのか。彼らはその円を保有し続けて、円で物を買い消費をするのだろうか。答えはノーだ。彼らは円が儲かると思ったから一時的に円に投資をしただけで、もうけた後はそそくさと資金を自国通貨(あるいは基軸通貨ドル)に引き上げるはずだ。つまり、円の価値が高くなると思って円を買った日本国外の投資家の資金は、長い目で見ると再び円から出ていく。長期的に見て、海外投資家の円買いは円高圧力にはならないのだ(一時的な円高をここで否定するつもりはない)。

長期的に見て、日本ではデフレが続くと考えられるが、それに合わせて為替相場が円高であり続けることは難しい。これが今回の結論だ。この結論から導き出される日本人がとるべき投資行動については次回