人口減少は現在厚生労働省が予測しているものよりも急激に悪化する可能性もある。今回は、その点について触れている記事があったのでピックアップ。
人口減少が自衛隊に及ぼす影響に、日本人は気づいていますか?(現代ビジネス)
多くの日本人にとっては想像できないだろうが、若年人口の減少と、高齢人口の増加がある程度まで行き着くと、多くの若者が日本の将来に見切りをつけ、日本を飛び出してもっと活気があり負担が少ない国に移住する可能性が高まる。その場合、人口減少も国力の低下もなだらかな下降ではなく、ある段階で急速に降下する事になる。
(中略)
例えば米国は、軍隊の兵力は、州兵、予備軍をあわせ日本の約20倍、そして国土の面積が26倍と広く、海外任務も行っているが、それでも160の陸軍施設はない。
陸上自衛隊の駐屯地からは、日本国内のほとんどの地域に、出発から4時間以内に到着可能といわれるように、国土に均等に配備されている。
しかし、内戦の可能性がなく、しかも島国の日本では、防衛の重要度や脅威度は地域によって偏りがあり、均等配置には必然性がない。(引用ここまで)
現代ビジネス 2019/05/05
記事自体は自衛隊という国防に対する影響を論じている。資産運用について考えるべき点については、上記引用部分を見てほしい。
引用の前半部分は、高齢化・人口減少がある程度まで進むと、若者が将来に希望を持てなくなり急速に国外流出流つ懸念について述べている。私の意見は100%、この記事の著者と同じである。
失われた20年と呼ばれる平成の時代と、今後の令和時代で根本的に異なると私が考えている点は、若者の将来に対する考え方だと思う。平成の失われた20年に若者として生きてきた人たちは、当然その前のバブル期に幼少期を過ごしてきた。その時代は、「Japan as No.1」で知られるように日本の将来に対してほとんどの人は不安を持っていなかった時代だ。このような時代に子供に教育を受けさせてきた人たちは、当然「No.1」の国で将来いかに生活を続けていくかという観点で接していたと思う。
一方で、令和時代に若者として生きる、あるいは若者になる人たちはどうだろうか?日本の未来はだめかもしれないと聞かされながら大きくなった世代である。彼らは、日本が立ち行かなくなる可能性も考慮しながら自分の行動を選択してきたはずだ(100%でなくとも少しは意識してきたはずだ)。そのような人たちが、今社会に増えてきている。彼らは、今後この国を出るかもしれないという選択肢を手元に持って考えているだろう。
それでも、多くの人は日本から海外に脱出することはないかもしれない。一番大きな障害はご存知の通り言葉(英語)だ。日本人はアジアでも一二を争うほど英語ができない。日本語の特異性に問題もあるといわれるが、それ以上に英語を使用する必要性に駆られてこなかったことが大きいだろう。それが変わろうとしている。
小学校からの英語教育の開始など、語学力教育増強の話を耳にするようになって久しい。個人的には小学校のなんちゃって英語教育で日本人の大半が英語を話せるようになるとは思えない。だが、英語に対するハードルは確実に下がっていく。また、学校という子供たちにとっては競争の場に英語、特に英会話が持ち込まれることによって、優秀なエリートたちが学校でエリートとして見られ続けるには英語を話せるようになる必要が強くなってきていると思う。彼ら、彼女らは、自らの努力を惜しまず、英語を流ちょうに話せるグローバルエリートとして巣立っていくだろう。
このグローバルエリートの量産が、日本にとって大きな問題になるだろう。優秀な若者が世界中で活躍するのは喜ばしいことだ。が、優秀な人材がいなくなれば国は立ち行かなくなる。
話はそれるが、上記のグローバルエリートの話をしているとどうしてもソビエト連邦や中国などの共産主義国家の影がちらついてくる。共産主義国家が成功できなかった要因の一つとして、やる気のある人材に対して報いる施策を取ってこなかったことが挙げられるのはご存知だと思う。国営農場でいくら頑張っても給料は怠けている人と同じだけしかもらえない。それなら頑張るのは馬鹿らしくなるというわけでだ。この状況が今後の日本でも起きるのではないかと危惧している。
日本は資本主義国だと教えられるが、世の中には最も成功した社会主義国と呼ぶ人もいる。私個人の意見は最も成功した社会主義国に近いと思っている。この国が”社会主義国”として成功できた要因はいくらかあるだろうが、中国と同じように社会主義(共産主義)に資本主義をうまく取り込めたことが成功の要因だと考えている。
この観点で見た時の中国と日本の共通点は人の移動の制限だと思う。中国は都市戸籍と農村に分かれている点や、さらに完全な国家による管理訂正で人の移動(特に国外への流出)を制限している。海外に出られるのは一部のエリートだけだ。日本はこれの移動を制限する障害が語学だったのではないかと思う。そしてその障害が今、徐々にではあるが取り払われようとしている。その結果迎えるのは、上記の引用で懸念された世界。つまり、若者がどんどん海外に流出していく世界なのかもしれない。