令和時代は本格的な人口減少時代であることは疑う余地はない。減少する労働力を補うために与党は着々と外国人移民政策を推進している。ここではその政策の是非について語るつもりはない。今後、外国人移民政策が推進されることにより日本に居住する外国人が増え続けると仮定し、それにより日本の消費がどうなるかについて考えてみたい。
増える外国人移民
様々なところで報道されている通り、日本に居住する外国人は急増している。東京都内だけではなく、首都圏近郊や地方の主要都市でも観光客以外の外国人を見かけることが増えている。下記で引用する日経新聞の記事にもあるように、外国人居住区のようなところまでできつつあるのが現状だ。
「ごみの日を守れ!」と「歓迎」が共存する外国人街(日本経済新聞)
日本で暮らす外国人は約273万人で10年間で60万人も増えた。西川口や蕨にあるような外国人街が次々と生まれている。東京では江戸川区西葛西にインド人、新宿区高田馬場にミャンマー人、足立区竹の塚にフィリピン人が多く集まっている。ネパール人やベトナム人が多く暮らす地域もある。日本語を話さず、日本人と交わらずに生活する外国人も多い。
日本経済新聞 2019/04/30
記事でも言及されているように、日本で暮らす外国人は統計上は273万人。不法に居住している外国人もいると考えられるので実態はもっと多いだろう。この10年で60万人もふえたそうだ。伸び率はざっくり計算して毎年約2.8%程度だ。日本の人口を1億2000万人とすると、人口の約2.2%が外国人という計算になる。決して無視できる大きさではないことがわかるだろう。
外国人の消費動向は?
探し方が悪いだけの気がするが、外国人居住者(旅行者ではなく)の消費動向についてはっきりとしたデータが見当たらなかったので、移民大国米国のデータから類推したいと思う。上記で引用した日経新聞の記事からもわかるように、日本に来ている外国人居住者の大半はアジア人だ。そこで、米国におけるアジア系移民の消費動向に関するデータを見てみよう。
コラム・シリーズ「米国における人種別の消費行動」(ニールセン カンパニー合同会社)
アジア系アメリカ人の特徴として、所得水準の高いことがまず挙げられる。アジア系アメリカ人の世帯年収の中央値は2013 年で67,065ドルと、非ヒスパニック系白人の58,270ドルを上回っている。その結果、購買力も高い水準にあり、1世帯あたりの消費支出額は米国の標準的な世帯に比べ約19%多い。2014年に7,700億ドルだったアジア系アメリカ人全体の購買力は、2018年には1兆ドルに達すると見られる。これはサウジアラビアやスイスの国全体のGDPを上回り、トルコのそれに匹敵するレベルである。アジア系アメリカ人によって構成される市場がいかに大きく魅力的であるかを物語っている。
(中略)
ニールセンが収集している世帯別の購買行動のデータを見ると、食料品では野菜・穀物や前菜が、平均的な米国の世帯に比べ特に購買金額が大きいカテゴリーとなっている。他にも卵や魚介類等の生鮮食品、食用油の購買金額もよく購入されるカテゴリーである。食品以外では、カメラ、フィルムやスキンケア用品、またベビー用品の購入金額が大きい。
ここから、推察されるのは、家庭での生活を重視する傾向(家での調理、ベビー用品への支出)、そして、健康・美容志向の強さである。後者をさらに見ると、アンケートに回答したアジア系アメリカ人の22%が「家ではなるべくジャンクフードを食べないようにする」、31%が「オーガニックな食品をなるべく食べるようにする」と回答している。(引用ここまで)
ニールセン カンパニー合同会社 2015/08/20
このデータは2015年のものなので若干古いが、米国におけるアジア人移民の消費動向を見るうえではよいデータだろう。アジア系移民は所得水準が高いため、消費支出が米国の標準世帯よりも約20%程度大きいのだという。レポートを見る限りでは、アジア系だから家族志向が強いという傾向はあるようなだけで特段贅沢志向があるようには見られない。デジタル機器に対してはやや購買意欲が強うようではある。
このニールセンの調査を見る限りだと、アジア系だから消費が旺盛というよりは、所得水準が高いから消費が旺盛という結論になる。
移民が消費に寄与するかどうかは所得水準次第
米国における調査を見ると、当たり前ではあるが、移民が消費に寄与する度合いはその所得水準に大きく依存する可能性が高い。米国のようにしっかり教育を受けた高技能の移民であれば、平均的な居住者よりも所得水準は高くなるため、世帯消費が大きくなる。一方で、低技能の単純労働者のような移民であれば、所得水準が低くなるため、消費への寄与は平均的な居住者と比較すると小さくなるだろう。
日本の移民政策は、どうも低技能の移民に対する門戸を開き、単純労働者の不足を補おうとする者のように感じる。そもそも、世界の人材獲得競争の中で、超一流の人材が、経済が低迷する可能性が高いといわれる日本を選ぶ可能性は低いだろう。そうすると、日本に移民としてやってくる人材は、どうしてもアメリカと比べると技能的に劣ってしまうことになる(もちろん、日本が好きな人や日本の安全・安心にひかれて超一流人材を引き付けることも不可能ではないと思うが…)。
となると、外国人移民一人による日本国内の消費は、日本人一人による消費と比較すると目劣るすることになると思われる。とすれば、日本人が減少するスピードを上回るスピードで外国人移民を増やさなければ、日本の消費低迷を回避することは難しいという結論になる。
外国人移民だけでは、人口減少による悪影響(低消費)を打ち消すことはできないだろう。やはり令和時代は日本国内のインフレを警戒するのではなく、海外のインフレを警戒した投資を考えるべきであろう(詳細はこちら)。