【令和の資産運用】中央銀行が債務超過になってもインフレは起きない

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国債金利0.2%強上昇なら保有長期国債の時価が簿価下回る=若田部日銀副総裁(ロイター)

そのうえで「出口に向かう時に日銀の収益がどうなるかは、将来の経済・物価情勢や金利環境に加え、日銀がどのような手段をどのような順序で用いるかで大きく変わる。多様なシミュレーションがある」と述べた。さらには、物価安定目標の実現に時間がかかり、日銀はまだ出口を議論する段階にはないため、「現時点で収益に関する具体的な数字を出すことは、市場との対話の観点からもかえって混乱を起こす」とした。

(中略)

若田部副総裁は「中央銀行の財務が悪化することで通貨の信認、中銀の政策遂行能力を毀損することを懸念する見方があるのは認識している」とした。ただ「収益が振れても債務不履行に陥ることはなく、金融政策や金融システム安定のための政策遂行力には影響がないというのが中央銀行の中央銀行たるゆえん」と述べた。
副総裁はまた、管理通貨制度の下で不換紙幣を発行しており、長い目で見れば通貨発行益が発生するため「中央銀行は債務超過をそれほど心配する必要がない。国民にも理解されており、そのことについて我々が懸念していることはない」とした。
先進国で中央銀行が債務超過になった例として、1970年代の旧西ドイツを挙げ「歴史的な事例を見ても、中央銀行が債務超過になったことで、大きなインフレになったことはない」と述べた。

ロイター 2019/05/23

日銀の若田部副総裁の参議院財政金融委員会における発言。日本維新の会所属の参議院銀で元伝説のトレーダーである藤巻ジャパン代表の藤巻健史氏の質問に対する返答。ちなみに藤巻氏は財政破綻論者として知られ、日本国債の野放図な発行による財政破綻とそれによって引き起こされるインフレを長年主張している方です。

藤巻氏が主張するように、財政悪化による通貨の信認低下がインフレを引き起こすという筋道も理解できなくはないですが、そもそもインフレは物の価格が上昇することだという点を個人的には強調したいです。通貨の価値が相対的に下がることにより、物の価格が上昇するということも理解できますが、国内で物が余るような状態ではそもそも物の価格が上がるはずはない。生産力が余っており、そこら中にモノがあふれている状況では、通貨の価値が下がっても物の価格が本当に上昇するのか疑問です。

確かに、海外から輸入している物品については円の価値が下落することにより価格上昇の圧力がかかるということは理解できます。貿易立国として、多くの部品を輸入していることに加え、エネルギーもほとんどを輸入に頼っているので、このあたりの影響は厳しいものになるかもしれません。

しかし、国内で生産されており個人が生活していくのに必要な食料などの物品が適正に供給されているのであれば、それらの価格は急激には上昇しないでしょう。であれば、個人が国内で生きていくことについては何ら問題なく、その結果通貨安による(海外から見た)生産コストの低減によって輸出にプラスの影響が現れるというシナリオも想定できます。そうなれば貿易黒字を通して外貨が入ってくるので日本国の財政状況は好転します。

つまり、日本で生きていくのに最低限必要な物品さえちゃんと供給されていれば、極端な通貨安によるインフレは生じないのではないかとも言えるわけです。

ただ、これはあくまで日本国内の閉じこもって生きる話ですので、これまで通り海外での購買力を維持したいのであれば、個人レベルでは外貨を保有しておくことをお勧めします(詳細はこちら)。