【データビジネス】セブン&アイHDが企業間データ共有連合を作る背景にある昔からの経営哲学 | あじゅWeb

【データビジネス】セブン&アイHDが企業間データ共有連合を作る背景にある昔からの経営哲学

セブン&アイ、異業種と築くデータ連合(日本経済新聞)

グーグルやアップルなど米IT(情報技術)大手が大きく先行する「データ経済圏」づくりに、企業連合で挑む動きが国内で広がってきた。セブン&アイ・ホールディングス(HD)は鉄道や電力など異業種と研究組織を結成。アスクルも自社のデータをメーカーに公開し、共同での商品開発や販促などにつなげている。小売業もデータとテクノロジーを使いこなせなければ勝ち残れない時代。各社のグループづくりのスピードは一段と加速する。

(引用ここまで)

日本経済新聞

リンク先は有料記事ですので、引用は短めにしています。内容を要約すると、

  • 日本国内でもデータの共有に業種を超えて取り組む例が増えてきた
  • セブン&アイは異業種10社との共同研究組織を立ち上げ成果を出している
  • リアルの接点を持つことの強みを生かせばアマゾンなどとも対抗できる(セブン&アイ副社長インタビュー)

といった感じ。特に大企業は想像以上にデータを活用できていないので、このような取り組みが異業種で行われるということは素晴らしいことですね。

記事内では、セブン&アイHDが異業種間のデータ相互利用を他社に呼び掛けたということが書かれています。記事では特に言及されていませんが、セブン&アイはデータを積極的にビジネスに活用するという観点では実は知られた存在です。かなり古いものではありますが、ハーバードビジネスレビューに下記のようなものがあります。

Tanpin Kanri: Retail Practice at Seven-Eleven Japan (Harvard Business Review)

Toshifumi Suzuki, chairman and CEO of Seven and I Holding Co., was widely credited as the mastermind behind Seven-Eleven Japan’s spectacular rise. Although Seven-Eleven Japan began as a small licensee of U.S. convenience store chain 7-Eleven, Inc. (then Southland Corp.) in 1974, it grew to become the highest grossing retailer in Japan, eclipsing its then-parent Ito-Yokado’s sales. By 2005, it also owned a controlling stake in 7-Eleven, Inc. Over the years, Suzuki’s emphasis on fresh merchandise, innovative inventory management techniques, and numerous technological improvements guided Seven-Eleven Japan’s rapid growth. At the core of these lies Tanpin Kanri, Suzuki’s signature management framework.

翻訳

セブン&アイHDのCEOである鈴木敏文氏は、セブンイレブン・ジャパンが驚異的成長を遂げた際の立役者として広く知られている。セブンイレブン・ジャパンは1974年にアメリカのコンビニエンスストアチェーンである7-Eleven, Inc.からライセンスを得てビジネスを始めたが、かつての親会社であるイトーヨーカドーをしのぎ、日本で最大の売上高を誇る小売業者にまで成長した。2005年までには、米国の7-Eleven, Inc.を支配下に置くようになった。長年にわたり、鈴木氏は生鮮品、革新的在庫管理技術、そして数多くの技術的改善を強調しており、それがセブンイレブン・ジャパンの急成長の原動力となった。この考えの下地となっているのが「Tanpin Kanri(単品管理)」と呼ばれる、鈴木氏による経営の枠組みである。

(引用ここまで)

Harvard Business Review

Harvard Business Reviewの引用はただの概要で、実際の内容はまだまだ続きます。記事自体は2005年のものなので、もう15年ぐらい前のものです。この中で「単品管理」という在庫管理哲学が語られているのですが、簡単に言うと「各商品がどれぐらい売れてどのように回転しているのかデータで管理し、各店舗の社員が個々の商品の売り上げ予測を行う」というものです(ちょっと要約し過ぎですが)。

レビューの中で強調されているのが、POSデータを使って各店舗の社員が商品の売り上げに影響を与えている要因を自ら考え在庫管理を行うという考え方。ただ単に、POSで売り上げを管理するだけでなく、それを攻めの経営に使い、しかも経営陣だけでなく書く店舗の末端社員が考える、というのが参考にすべき姿勢だとされていました。

これって、今回の日経新聞の記事に書かれていることと基本哲学は同じなんですよね。データがある。これを使って、売り上げ予測をしよう。でも自分たちだけではデータが足りない。他の企業と連携しよう。セブン&アイHDにとってはとても自然な流れだったのでしょう。この一見簡単に見えることを自然にできるところがセブン&アイHDの強みの一つと言えると思います。

セブン&アイHDはまだまだ伸びるかもしれませんね。